終わらない七月九日

「痛い…。」

思わず声が出た。でもそれは微かな声で、二人は会話に夢中で私に気づかなかった。
よく分からないけど、これは現実?この腕時計は一体?あの運転手は?そもそも今まで着けたことのない腕時計を身に付けているのに、ナツも大ちゃんも反応しない…。
私はハッと思いだして自分の腕時計を見ると、時刻はちょうど十二時五十分を指そうとしていた。ケーキ屋の時計を見たあの時は、確か十二時四十九分くらいだったはず。

「そうだ!皆で湖にあるボート乗らない?」

公園も近づき、大ちゃんが提案してきた。

「良いね!」

私は目一杯笑ってみせた。何も起こらなくて一安心したのだ。

「三人で乗ろうよ!」

私はナツの方を見た。

「…そうだな。」

ナツは少し考えたが賛成してくれて、公園に入った私たちは入口の近くにあるボート乗り場へ向かった。