終わらない七月九日

どれくらい経っただろうか。私たちは病院を出て、タクシーに乗り込み家に向かっていた。
私は頭を少し強く打ってしまったくらいで特に大きな傷はなく、検査の結果何もなかったので、その日の内に病院を出ていた。

タクシーの後部座席に座っている私と母親。母親は疲れたのか、窓ガラスに頭をもたれてウトウトしていた。

「クーラー、寒くないですか?」

タクシーの運転手の男性がしゃがれた声で突然話しかけてきた。

「大丈夫です。」

私は運転手の顔を見ることもなく返事をした。

「…ところでね、ここの近くで今日事故があって、高校生が一人亡くなったみたいなんですよ。」

私は言葉が出なかった。しかし運転手は構わず続けた。