終わらない七月九日


「ねぇ…ナツと、大ちゃんは?」

私はゆっくり母親に聞いてみた。

「うん…大ちゃんは無事で今は一旦お家に帰ったわ…。」

私は聞いてはいけないこを聞いてしまったんじゃないか。

「ただ…ショック、受けないで欲しいんだけど…。」

まさかそんなはずはない。
母親の唾を飲む音が聞こえた。

「ナツ君はね…亡くなったよ…。」

母親は嗚咽を漏らした。

「そっか。」

自分でも不思議だが口から出たセリフはあっけないものだった。
ナツが死んだ?頭の中で何が起きたのか整理をしようとも、とてもじゃないけど無理で、ナツの死を受け入れることが出来なかった。
もしかしたら信じたくなかっただけかもしれない。
ただ隣で母親が泣いているという現実は、ナツが死んだと認識させるのに充分過ぎるくらいで、気づかないうちに私は目から涙をこぼしていた。