「結夏の体内のDNAか……」


「もしかしたら又お前のか?」

仕方なく頷いた。


「お前なあ……」


「結夏が言ったんだ『お天道様が見てる』って。だからそのカーテン用意して……」


「どれどれ」

孔明はおもむろに立ち上がり窓辺に行った。


「裾が……」


「長いのを買って縫ったんだ。その後で思いっきり愛し合った。でも結夏はそれっきり戻って来ないんだ。だからカーテンはそのままなんだ」


「それじゃ優香が可哀想だよ」


「いや、優香がそのままにしておこうって言ったんだ。結夏の迎え火を炊いた日にカーテン売場に行こうとしたら」


「優香はきっと、結夏と一緒に暮らすことを選択したんだね。お前が負担にならないように……優しいな優香は」


「だから吹っ切らなければならないと思っているんだ」


「吹っ切れればいいな」

孔明は何時になく神妙だった。




 「ところで翔はあれからどうなんだい?」


「翔は兄貴が釈放されても会わせてもらえないんだ。あんなことしたんだから仕方ないけどね」


「可哀想だな、兄貴も翔も」


「万引きの濡れ衣を着せれた時に離婚したんだ。だから翔のママは働き詰めだ」


「だから遅くまで保育園で預かってもらっているのか?」


「朝七時から夜八時までだ。でも、それならまだいい方なんだ」


「可哀想だな翔」


「だから優香が放っとけないらしいんだ『隼に似てる』って」


「僕に?」


「ほらお前、ずっと叔父さんの迎えに来るのを待っていただろう? 優香はあの時のお前が忘れられないそうだ」


「きっと優香は気にしているんだよ。ブランコのことを……。でも違うんだよ。優香家のおばさんが僕と一緒に帰らなくなった理由は」

僕はあの写真をカバンから取り出した。


「原因はこの写真なんだよ。おばさんはお袋と父の恋を知っていたんだ。だからこれを週刊誌で見た時喜んだそうだよ。でも内容に愕然としたようだ。裏切られた。そう思ったのかも知れない」


「例のマネジャーの仕業か?」


「その頃ニューヨークの両親は日本にいて、母は僕に付き添っていたんだそうだ。マネジャーは隠し撮りだけじゃなくて、地獄耳で集めた情報を週刊誌に売った訳だよ」


「両天秤に掛けた末の判断か?」


「僕は確かにアメリカでは代理母から産まれたってことになっていたからね」


「だからって……」