物心ついた頃から一緒にいた私達。

でも時々隼が居なくなる。


それが芸能界の子役の仕事だからと気付いたのはパパからのあの言葉だった。


『この王子様ね、お隣の隼君だよ』


その意味が解らずに、隼を本物の王子様だと思っていた私。


だからもっと遊んでほしかたんだ。
せめて、すぐ傍にいる時位は。


だからあの日、私はブランコの鉄柵を越えたんだ。

今思い出した。
やはり悪かったのは自分だと言うことを……


隼はどんな思いで叔父さんの迎えを待っていたのだろうか?


私がママに手を引かれて無理矢理自転車乗せられた時、何時も背中にいた妹が前にいた。


本当に母は清々したのではないのだろうか?
幾ら母がタフだと言っても、自分から送り迎えを言い出したことだったとしても……

ずっと三人の子供を自転車に乗て保育園に通うのは無理をだったのかも知れない。




 あの時、帰る私達を見ながら園長先生の陰に隠れた隼を今更ながらに思い出す。

隼に寂しい辛い思いをさせたのは、紛れもなくこの私だと言うことを……

私は忘れてはいけないと思った。




 あの時誰かがママに言っていた。


『隼君だけが悪いんじゃない』って。

でもママ母は頑なに隼を私から遠ざけた。


(あの時、私はきっと隼の心の闇を増幅させてしまったのだ。だから、それでなくても寂しかった隼に更なる苦痛を与えてしまったのかも知れない)




 太鼓橋を渡る時、その僅かな隙間にどうしても目が行く。


(こんな崖から落とされたのだったら流産しても当然か?)

そう思いつつも頭を振った。


(結夏さん。傍に居たのに気付かなくてごめんなさい)

私は合掌しながら、結夏さんと赤ちゃんの成仏されることを祈っていた。


何気に階段を見ると誰かが其処にいた。

バイクが無いから気付かなかったけど、それは隼のようだった。




 実は昨日、結夏さんのストーカーがあのアイスクリームショップにいた時私を訪ねてきた。

彼は隼に結夏さんのストーカーだったことを告白してから、太鼓橋の隙間から落とされた事実を伝えたそうだ。


(だから此処に居るのね)
死んでも尚隼に愛される結夏さん。


(私も結夏さんのように愛されたい)

罰当たりだと知りつつ願っていた。