確かに結夏さんはストーカーに悩まされていたようだ。


仕事先から戻る時、いや多分会社から出てきたところから付けられていると感じたのかも知れない。

でも彼はただ後を付けるだけで、きっと何もしなかったのではないだろうか?


それでも結夏さんは、何時か何かをされるのではないなかと不安にかられていたのかも知れない。




 隼と再会したのはそんな時だったのだろう。

結夏さんは地獄に仏の心境だったに違いない。

だから隼に救いを求めたのだろう。


隼はきっと何も知らずに結夏さんをあの部屋に招き入れて……
肌を重ねた。


もし結夏さんのお腹の中にいたのが隼の子供だとしたら……
それ以外考えられない。


隼の年下に産まれたことをこんなに悔やんだ覚えはない。
保育園に行けばクラスこそ違え、会えていた。
あのオンボロアパートにいれば、隼と遊んでいられた。


それでも私は隼の恋人になりたかった。
もし私が同級生だったなら、隼の傍にいられたのは私かも知れなかったのだ。


そうなれば、結夏さんは今も生きていられたかも知れないのだ。




 ストーカーに追われた日。
結夏さんは何処へ逃げるつもりだったのだろう?
太鼓橋の向こうには、結夏さんの家はないのに……


あるのはそのオンボロアパート。


其処には未だに隼の叔父さんが住んでいた。


だから太鼓橋を渡ってしまったのだろうか?


実は優香さんの家は反対側なのだ。
でも其処は結夏さんにとっては遠かった。

だから太鼓橋の向こうに見えるあのオンボロアパートが、優香さんにとっては安住の地に見えたのかも知れない。




 結夏さんのストーカーだった彼は約束した通り警察に出頭していた。


取り調べ室で彼はまず、結夏さんのストーカーだったことを告白した。


きっと警察は、ストーカーによる暴行致死事件の真犯人が自首してきたと浮き足だったのではないだろうか。


実は結夏さんはそれが原因で流産させられ、出血多量でショック死させられていたのだ。


その事実を園長先生から聞いた時、体中が鳥肌に覆われた。


彼も、相当ショックを受けているのではないのかと思った。