食後はゲームで遊ぶことにした。
一応トランプとオセロを用意していた。


「あっ、隼ズルい」


「角を取らなかった優香が悪いんだよ。これで全部いただきだ」


「うぇーん。手加減してやっていたら……」

泣き真似する優香が愛しい。
思わず抱き締めたくなっていた。


そんなこんなであっと言う間に三時になっていた。




 オヤツはやはりパンだった。
でもそれは、フレンチトーストで余ったソフトフランスパンを使ったラスクだったのだ。


「こんなのがすぐ出来るの? 優香はまるで魔法使いみたいだね」


「うふふ。ありがとう」


「いや、ありがとうは僕の言わなきゃいけないセリフだよ。優香……本当にありがとう」


「又来て作っていい?」


「望むところです」

僕は優香の手を取った。




 優香のメモをこっそり見たら、シミュレーションしたことがうかがわれた。

スーパーで売っている玉子は最低四個入りなのだ。
フレンチトーストに一つ使用して、残りは茹で玉子にするつもりだったらしい。

フランスパンはフレンチトーストにラスク。
牛乳はフレンチトーストにカッテージチーズ。

そのカッテージチーズを作る時に使うレモンは二切れ残して、ラスクと一緒に楽しむ紅茶に入れる。

全く無駄のない献立を優香は考えていたのだった。


「優香はきっといい奥さんになれるな。旦那様が羨ましい」

本当は僕のお嫁さんにしたい。って言いたい。
でも、言えるはずがなかった。




 「あれっ、あのカーテン?」

僕の言葉に動揺したのか優香の目はキョロキョロしてからカーテンに釘付けになったようだった。


「何だか裾がおかしい」

優香は立ち上がった。


「あっ、あれはあのままでいいんだ。結夏が……」

僕は又結夏と言ってしまった。
優香の前で結夏との思い出を語ろうとしていた。


「ごめん。気を悪くしないでね。あのカーテンは大切な思いでの品なんだ。だから直せないんだ」

優香には未練がましく見えるかも知れない。
でもやはり、結夏との思い出は消せないんだ。

消せるはずがないんだ。


『ごめんね。黒いキャップだったから違和感無くて……。そのゴーグルで気付いたんだ。ねえ、どうせならこのまま僕の家に行く?』

優香と再会した日の言葉を思い出した。

そうだ。僕は結夏と良くバイクで出掛けていたから優香のヘルメット姿に違和感が無かったのかも知れない……

ふと、そう思った。