僕と優香の結婚式は身内だけで執り行われることとなった。
それは又マスコミのネタにされない配慮だった。


疚しいことはないから、堂々としていたい。
それでも僕はソフトテニスの王子様騒動を思い出し、周りの意見に従った。




 優香は白無垢だった。
下着から打ち掛けまで白一色で染められた格調高い和装だ。


身を清めることと嫁ぎ先の色に染まる意味がある。


明治や大正時代の花嫁などを演じてきたお袋に聞いた話しだ。

戦前の花嫁衣装は黒いのが主流だったそうだ。
そして喪服は白だった。


これは、貴方以外の方には嫁ぎません。
と言う、未亡人の決意の現れなのだそうだ。


(今は逆転しているのかな?)
何気にそう思った。


白無垢姿の優香を見ていたら、きっと白い喪服も似合うだろうと思えてきた。
僕は、優香の最初で最後の男になりたいと思った。
だから僕が先に死んだら、白い喪服を着てほしいと願っていた。
男の無責任の願望に過ぎないけど……




 まず優香は母親のお墓に向かい、挙式することを報告した。
次は結夏のお墓だ。


そう……
優香と僕の選んだ式場は結夏の眠る菩提寺だったのだ。


チャペル、神前、仏前、人前と沢山ある中、優香の選んだのは墓前結婚式だった。


それは、どうしても結夏に許可してもらいたいと優香が切に願った結果だったのだ。


「結夏さん、許してください。結夏さんの愛した相澤隼さんと結婚することになりました」


「結夏、許してくれ。僕は結夏の亡くなっていた事実を知らなかった。いや、二年間も確かめもしなかった。本当にごめん。どうか僕を……」

皆の前で結夏の流れた胎児のことは言えなかった。
だから僕は心の中で誤った。
優香はそんな僕に寄り添ってくれていた。


「結夏。僕達を見守ってくれないか?」


「お願いします結夏さん。私達の行く末を……」

優香の声がフェードアウトする。気になってそーっと見ると、優香は泣いていた。


そんな優香を見ていたら急に涙が吹き出してきた。


「優香、愛してる」
僕は優香の唇に唇を重ねた。


「優香さん。隼。おめでとう」
皆一斉に僕達を祝福してくれていた。




 十月十日。
空模様の怪しい中、僕達は結婚した。
何とか持ちこたえてくれたけど、明日は完璧に雨だと言う。
そんな中で優香はあることを実行しようとしていた。
それが、あの日遠い目をしていた真相だった。