十月十日は僕の誕生日だ。
今年は偶々土曜日にあたり、その日から三連休が始まる。
僕はその日に挙式しようと思っていた。


保育園も休みになるから優香も賛成してくれるはずだった。


それにしても出来すぎている。
何年か振りにシルバーウィークがあったり、誕生日から三連休になったり……
なんだか後が怖いと感じていた。


「優香、もしかしたら全てが運命だったのかも知れないね」


「そう、運命かもね」

優香は何故か遠い目をしていた。




 お袋に子供が出来たこともあって、ニューヨークの両親とはホテルでの会食だった。


「俺は今まで通り、あのアパートに住むよ」


「叔父さん、だったら僕のマンションに来て、あのアパートは僕と優香が住むよ。だってオーナーなんでしょう?」


「あら、違うわよ。あれは私が隼のために用意した物よ。もしかしたら家賃払っていた?」


「止めてくれよ。お金なんて貰える訳がない。ただ修繕費なんか負担してもらっているだけだよ」


「あっ、だから安かったのか? あれっ、叔父さん確か宝くじが当たったんじゃなかったの?」


「いや、当たったのは当たったけどジャンボじゃないんだ」


「それを勘違いして、僕は叔父さんがマンションを買った物だと思っていたのか?」


「そうみたいね。だから隼は優香さんとあのマンションで住んでくれたら嬉しいわ」


「優香、それでいい?」

そっーと優香を見ると頷いてくれていた。
結夏との思い出がいっぱい詰まっているマンションだから本当はイヤなんだと思いつつ、僕は優香をバグしていた。


「そうだ隼、何時かのように濃厚のチューしてくれよ。結婚式の予行練習みたいなもんだ」


「お前は相変わらずデリカシーのない奴だ」
親父が呆れたように言った。




 「相変わらず仲がいいのね。私達が結婚した日に二人は出逢ったの。お互いが一目惚れですぐに……」


「だから私が子供を授かった時、責任を感じて私が母親になるって言ってくれたのよ」


「私は、怜奈が必ず大女優になるって信じていたの。だからよ」


「解っているわよ」
お袋はそう言いながら笑っていた。




 「お袋、親父聞いてくれ。僕はこのまま相澤隼でいたいんだ。今まで通りにお父さんとお母さんの子供として……」


「隼それで良いの?」


「勿論だよ。これからもずっと僕のパパとママでいてください」

僕は戸籍上の両親の前で三つ指をついた。