私は湯口美咲 25歳
物心ついた頃からカメラが大好きで、最初は使い捨てカメラ、お父さんが持ってた大きなカメラ、人を撮るより、空を撮るのが大好きだった。
大きな会社じゃないけど、おおらかな女社長の会社に就職した。

大学入学と同時に独り暮らしを始めて、両親には反対されるかと思ったけど、私には付き合って3年になる恋人がいるから安心だって。
独り暮らしを始めた頃は、ベランダの向こうから聞こえてくる日常的な音を聞きながら毎日平凡な生活をしてる。
車の走るの音、郵便配達のバイクの音、ママチャリに乗ったおばちゃんがブレーキをかける音、小型犬の鳴き声、電車の走る音、ときどき通る飛行機の音、近所で工事をする音…
両親と一緒に住んでいた頃は特に気にしていなかった音だったけど、何だか新鮮だった。
でもいつか、耳障りな音になっちゃうのかな…

お昼ご飯を食べながらのんびり過ごしていると、携帯が鳴った…。

“ドアの前ー、開けてー”

来る時はメールしてって言っても、玄関のドアの前に着いてからメールをする…
上村博紀
私の4つ上の恋人。

「よっ!昼飯食べよ!」

休みの日、博紀は必ずお昼ご飯は私の家で食べにくるのが習慣になってるみたい。

「お、ロールキャベツ!」

大好物のロールキャベツを前にはしゃぐ彼…。
昨夜作ったロールキャベツの残りだけど、博紀が来るはずだったけど、仕事が遅くなって来れなくなったから、恋人同士には有りがちな理由。

「今度埋め合わせする!!」

と言って顔の前で両手を合わせて“ごめん”のジェスチャー。
美味しそうに食べてくれる姿に、心の中で『許してやるか』何て思う私は、甘いのかな?
平凡で、のんびり過ごす休日、非日常は妄想の中だけかと思っていた。