小学生の頃はあたしより背が低かったのに、中学に入ってからグングン伸び出して気付くと追い抜かされていた。



男らしくなったしなやかな指、いつの間にか筋肉がついたたくましい腕、そして……出っ張った喉仏。


ワンオクターブ低くなった声。


あたしが知ってる幼かった頃のしんちゃんは、もういない。


一緒に成長して来て、それを側で見守って来たのは他の誰でもないあたしだったのに。



家族と同じくらい、もしくはそれ以上に大切だった。


大好きだった。


しんちゃんのこと。



本当は今でも……。





「邪魔」



感傷に浸っていたあたしは、そんな不機嫌な声によって現実に引き戻された。


じゃ、邪魔って。



「あ……」



ハッとして目の前にいる人の顔をパッと見上げる。


げげっ!



そこにいたのは、涼しげな顔であたしを見下ろす桐谷だった。