近くにある井瀬の顔を、手のひらでグッと押し返していると、隣から黒いオーラを放つ爽の声が聞こえて来た。
低く尖ったその声は、明らかに怒っている。
だけどあたしは怖いと思うどころか、爽の声が聞こえたことにホッとしていた。
「うわー、いいとこだったのに」
“残念”
そんなことを思ってもいないかのように、ヘラリと笑い続ける井瀬はパッとあたしから離れた。
そして反省なんてまったくせず、肩をすくめて笑っている。
コ、コイツ……。
なんて奴だ。
だけど、ホッ。
良かった。
「さっさと教室に帰れ。二度と来るんじゃねえぞ、コラ」
爽はそんな井瀬を冷たく見上げながら、威圧感たっぷりの声でそう言った。



