「──気色悪ィことしてんじゃねーよ」
ソファに置いてあるクッションを抱き締めて俯いている晶の隣に、ドカッと彰那が腰を下ろした。
「もう帰ってきたんだ」
「帰って来ちゃ悪いかよ」
「いや……。やっぱ、気まずいもんな」
「何が?」
「おま……っ、さっき自分が気にしてたことも忘れたのか!?」
「あー……、ああ、アレな。ま、しっかり用心しとけ」
「何だよそれ! 意味わかんないって!」
「いいからいいから。お前は自分の胸に手ぇ当てて、いつも通り咲都のこと考えてりゃいいんだよ」
さっきまでの用心深かった態度はどこへやら。
掌を返すような彰那の態度に晶が納得できる筈もなく。
勢い余って掴み掛かったところで咲都の鉄槌が落ちてきた。
「ケンカするなら外でやってくれないかな。ていうか、さっきから兵藤くんおかしいよ」
「えっ!?」
優しさの欠片もない言葉に、晶はがっくりと肩を落とす。
「咲都ぉ~」
やや涙目で晶が咲都を見遣ると、冷ややかな視線が降りてきた。
そしてまた、晶はしゅんと背を丸めるのだった。


