美帆side






『泣かんで。』




耳元でささやかれたその声は私の全身を駆け回るように、包み込むように入ってくる。







ポロポロ出ていた涙も引っ込んで、
いつもよりも低く、大人っぽく響くその声に、思わずにやける。





『ばーか。泣いてないし。』




にやけてるのがばれたくなくて、
恥ずかしさを隠すように言う。


でもゆうにはお見通しで....



『にやけんなや。ばーか。』







『にやけてないし!!』
簡単にばれてしまって恥ずかしさが増す。







『ほらっ!行くよ。俺、めっちゃお腹すいたんだけど。』






体が離されて、ガラガラになったお腹が寒い。



無邪気に笑うゆうが今度は愛しくて、
すっごく単純な女だなと思う。




ゆうがポケットに突っ込んだ手を引き抜き自分の手とからめる。







あったかいな。やっぱ。
ゆうの全部を感じていたくて、
やっぱりゆうとずっとそばにいたくて、

そんなの絶対無理なのに、
わがままな自分を許して欲しいと思う。






あたりはすっかり暗くなってて、
もう道端の綺麗だった紅葉も見えない。






『あんまり遅くなると、お母さん心配するし、コンビニで、肉まんとかかおーよ。』



あったかいものが食べたい。





『よし、行こう。』










しばらく歩いて、普通にコンビニで肉まんと、ピザまんと、あんまんを買って、
2人でちょっとずつ食べた。






なんにもしてない普通の帰り道を歩いただけなのに、ゆうがいるだけでいろんなことが違って見えて、いつもと全然違う景色で。




もっともっとゆうを求めてしまう。








ゆうは私を家まで送ってくれて、
最後にぎゅっと抱きしめて私の口に
ちゅっとキスを落とした。


『また明日、迎えにきてね。』






『りょーかい。』




ゆうと話して、手をつないで、キスをして、頭の中はゆうでいっぱいで、






また明日も一緒に行けるのかと楽しみでたのしみで、夜も全然寝られなかった。