勿論、公務の合間の散策も続けている。

相変わらずの活気ある城下町。

戦が終わって以降、その活気は熱を増したように思える。

それは春の陽気からか、それとも平和が訪れた事に対する喜びからか。

「どちらだと思う?紅」

私は後ろを歩く赤い外套の騎士に問いかけてみる。

「さぁな」

苦笑いを浮かべる赤い騎士。

…紅はすっかり傷も回復した。

皇帝との一騎打ちの際に受けた腹の傷は、完全には癒えずに傷跡が残ったらしいが、特に日常生活に支障をきたすようなものではないとの事。

武術指南の最中の槍捌きの切れのよさから見るに、傷による戦闘での影響もないらしい。

もっとも、戦の終わった今となっては戦闘の影響などあまり関係はないが。

「散策など一人で来ればよかろう。俺まで駆り出すな」

少し迷惑顔の紅に、私はクルリと振り向いて笑みを向ける。

「そう言うな。貴方が命懸けで守りぬいた民衆の生活を見ておくのも、悪くはあるまい?」

「フン…」

鼻を鳴らしながらも、紅は満更ではないか、と言いだけに笑った。