「やめぇぇえええぇいっ!!!!」

突然。

そんな声を上げたのは皇帝だった。

その声の圧力は凄まじく、数百万に及ぶ両軍の兵士双方が動きを止めた。

「……」

皇帝はただ一人、戦場の中央へと歩み出る。

「成程。認めたくはないが東方同盟…我が軍に勝るとも劣らぬ統率力のようだ。このまま戦い続けたとて、我が軍の強さに尻尾を巻く事などは有り得ぬだろう」

彼は戦場の数百万の兵士の中から、たやすく私を見つけ出す。

「このまま戦を続け、消耗戦になり、悪戯に兵を失うのは乙女とて面白くはあるまい。それは俺とて望まぬところだ。そうであろう?」

「……」

皇帝の問いかけに私は頷く。

皇帝と意見が一致したのはこれが初めてだった。

しかし。

彼はあくまで支配者。

私と相容れる存在でない事は既に理解している。

だから、その後に彼が口にした言葉も、然程驚くほどの事ではなかった。

「戦を長引かせるつもりはない…乙女、俺と一騎打ちをしろ」