その意志の力の渦の中、私も剣を振るっていた。

襲い掛かる暗雲の如き鎧の騎士達。

その騎士を。

「はああああっ!!」

気合一閃、横薙ぎの刃で斬り散らす!!

…正直に言えば、心が痛んだ。

この兵士達にも、国に帰れば家族が待っているのだろう。

愛する恋人がいるのかもしれない。

可愛い幼子が父の帰りを待っているのかもしれない。

その『大切な人』の命を、私は奪っている。

罪深き行為。

しかし。

その汚名を恐れて剣を納めた結果、東の地はこの帝国兵達に蹂躙される。

東の地にとて、人々の生活がある。

民の営みがあり、平和に暮らす人々の国があるのだ。

私が剣を捨てた後は、一体誰が彼らを守るのだ?

『まだそんな事をウジウジと悩んでいるのか』

皮肉な笑みを浮かべたあの男の声が、聞こえたような気がした。

『笑われ続ける事にしたのではないのか?誰に何と言われようと、己の理想に生きると誓ったのではないのか?』

皮肉屋は私に苦笑いを浮かべる。

『この程度で迷うとは、随分と安い誓いだな』

フン…!

私は微かに笑みを浮かべた。

紅、貴方に言われずともわかっているさ。

「戦乙女、押し通る!!」

私は己の迷いごと、眼前の帝国兵を斬り伏せた!!