皇帝が私を見る。

「…紅を目の前で失い、呆けたかと思ったがな…吹っ切ったか、乙女」

「…違う」

私は首を横に振った。

「紅の死を吹っ切った訳ではない…紅は死んではおらぬ。私はそれを信じる事にしたのだ」

その言葉に、皇帝の笑みが消えた。

「愚か者が…まだそのような甘ったれた戯言を」

「何とでも言うがいい」

私の理想、考え方を否定される事は、東方同盟の一件でもう慣れた。

それでも私は私の信じるものの為に歩み続ける。

理想の為。

そして今は、きっと生き延びていると信じている紅の為。

…紅は魔道の兵器などというものに頼った戦い方など潔しとしない筈だ。

だから真っ向からの勝負に切り替えた。

戦うのならば悔いのないように。

小手先ではなく、全力を尽くした戦いを。

彼はそういう生き様を望む男だ。

ならば彼が戻ってくるまでの間、私がその生き方を体現してみせる。

「聞け、東方同盟!!」

私は大剣を天にかざした!!