それはまさに突然の事であった。

「乙女!」

早朝。

臣下と本日の公務の打ち合わせを終え、王宮の廊下を歩いていた私の元に一人の騎士が駆けてくる。

その狼狽ぶり…よくない知らせである事はすぐにわかった。

そしてその知らせの内容でさえも、ある程度は。

「…帝国か?」

「…は、はいっ、その通りですっ」

言葉の先を口にされ、騎士は息も整わぬまま頷く。

「帝国軍二百万、我が領土に進軍との知らせが偵察兵より入りました」

「チッ…」

私は思わず舌打ちする。

やはり来たか。

それにしても西を掌握してまだ数日だというのに、早くも東に攻め入ってくるとは何と節操のない…。

「わかった」

私は早足で準備に向かう。

「各同盟国に連絡を、それから女神兵にもすぐに準備をさせろ。指揮は紅に任せる」

「は、はいっ!」

気の毒ではあるが、息つく暇も与えずに騎士には再び伝令に走ってもらった。

…いよいよか。

私は唇を噛んだ。