それからこの堕天使はちょくちょく私の部屋に訪れるようになった。
あと2年で死ねる。
この寝たきりの毎日に終止符をつけられる。
堕天使がくるのはいつも夜だ。
夜、鍵がかかった大きな窓の鍵をあけて入ってくる。
──なにもしない。
会話も私を襲うことも、
ただ来ては椅子に座り、読みかけの小説を読んでいる。
もう3日で慣れたわ。
この天使が私の所に来るのも。
────────パキっ─────
チリチリと暖炉から聞こえる薪が燃える音。
けど次の薪は置いていなかった…
今は深夜、薪がないということは室温が下がってくる。
『……ねえ、薪を足してくれないかしら』
天使はちらっと私をみて薪だなから2つ持ってきて暖炉に置いた。
『ありがとう』
再び本を読み始める。
私はじ~っと月が沈むのを待っていた。
本来ならば、あの月の使いがきてこの命を捨てる予定だったのに…。
数時間だって、ふう…。
とため息を吐いた天使をみると伸びをしていた。
やはり…天使も疲れるのだろうか。
『………寝ないのか?人間は夜は寝るだろ?』
5日目にして最初の言葉。
『いつも寝てるばかりだから寝れないのよ』
『……ふ~ん』
『.....』
『……願い思いついたか?』
『そういえば3つ叶えてくれるんだったけ?』
『ああ、だけど俺たちには人間を殺せないからな』
『…そう、なのね。つまらないわ』
『.....願いかあ…。』
『あー、疲れた!慣れない本読んだら目いたいわ』
椅子の上で再び思いっきり伸びをする天使。
バサバサと羽まで伸びをすると、羽が抜けて床に落ちる。
『....あ、羽が....』
黒い羽がちらほら空を舞って静かに床に落ちる。
『おまえしかみえねーの、羽も、俺もな。だからいくら羽を落としてもほかの奴には見えないしなにもないと同様なんだよ』
『そう。便利なのね』
少しの間、無言。
天使はまた部屋のものを触り出す。
『………ねえ。』
『あん?』
『その落ちた羽は私はさわれるかしら…』
真っ黒な天使の羽。
一本一本艶やかで筆として使えそうな立派な羽だ。
『...おまえならな、』
『落ちたやつ…私にくれないかしら?』
『あ?…ああ、いいぜ』
そう言うと、落ちてる羽を一本だけ拾って私に差し出した。
『……落ちてるやつ、全部ほしいわ』
『欲張りだな、なら自分でベットからでてとれよ』
天使のその言葉を聞いて少しわらってしまった。
『...ふっ。わたし、歩けないの。』
差し出された羽を受け取ると同時に天使の口角が少し上に動いた。
真っ黒な瞳
はやり人間ではない、冷たい瞳。
『なら、治してやるよ。』
『...なに、骨を折って無理やり歩かせるようにしてくれるのかしら』
笑いながら言うと、私に掛けていた布団をいきなりとり、
クスクス笑い始めた。
『ぶ、無礼者!なにをするの!』
慌てて身体を起こして寝巻きを整え、天使を睨んだ。
『くっ...ぷぷっ...。』
手を口にあて、笑いをこらえてる天使を見てると怒りが混み合ってきて手を思いっきり伸ばして、叩こうとした。
『無礼者、人のからだを見て笑うなんて。天使はどういう教育をしているのかしら。』
『.....。おまえ、華奢すぎるだろ。』
『う、うるさい!そんなことはないわよ!』
『いや、今まで会った人間でいちばん華奢だ。』
『も、もう布団とりなさいよ!……こんな姿、見られたくないわ』
つま先にある布団をとろうと手をのばすがとれなくて悲しくなる。
ううん、悲しくじゃないわ、惨めになるのよ…。
