まず、基本的な質問にしよう。
「あ、貴方は誰?」
「私ハ、薺 愛莉」
「そうじゃなくて! なんていうか…何者なの?朝起きてみたら、枕元に貴方が居るし…」
私は考えが上手くまとまらず、モゴモゴと行き詰まっていると、
「…誕生日」
「誕生日?」
よく解らない返答が返ってきた。私の誕生日なんて、まだまだずっと先だし…。そもそも、なんで誕生日なんだ?
「私ノ誕生日ダッタノ。今日、私ハ産マレ、ソシテ…」
すると、愛莉ちゃんは、ぐっと言葉を飲み込んだように顔を曇らせた。
「そして…何よ」
「……言イタクナイ。伝エタクナイ」
愛莉ちゃんは、ふるふると首を振る。
明らかに私の質問に対して、拒否反応を見せているようだった。今日見た中で、一番人間らしい反応。
「じゃ、じゃあいいよ。他のにする! …何がいいかな…」
私が胸の前で腕を組み、うんうん唸っていると、向かって目の前に居た愛莉ちゃんが、向きを変え、すたすたと歩いていってしまう。
「え!? あ、ちょっと…!」
私は、胸の前で組んであった腕をほどき、急いで早足の彼女の隣で歩く。
時折、愛莉ちゃんの横顔をチラチラと様子を見るが、相変わらず冷めた無表情。どこを見ているのかすら、解らない視線。…どこかで、見た事がある気がする。でも、思い出してはいけない気がする…。
私が、物思いに耽っていると、
「ジャア、私ガ貴方二質問スル」
急に愛莉ちゃんが口を開き、立ち止まる。私も思わず立ち止まる。
拒むように一度、口を閉じ、私をじっと見つめてくる。そのなんともいえない表情に、軽く唇を噛むが、なんとか止まり見つめ返す。すると、愛莉ちゃんは口を開いた。
「貴方ハ私。私ハ貴方。デモ」
近くにあった遮断機がゆっくりと降り始めた。向こうから、電車がやって来る。
そして、愛莉は

「ーーーーー、ーー?」

電車が通りすぎた音で、聞こえはしなかったが、確かに聴こえた。















「薺 愛莉ッテ、誰?」






カタコトの日本語で。