私は、顔を引き吊らせながら、そっと自分の部屋のドアから、顔だけを出した。
『もう1人の自分』は、普通に階段を降りている。…寝間着で、だ。
「あれじゃあ、お母さんに叱られるよ…!」
私は、急いでジャージに着替えて、部屋を飛び出した。すると、目を疑う光景がそこにあった。
『もう1人の自分』の身体の周りに、青白い小さな光がまとわりつき、一瞬のうちに、今私が着ているジャージ姿に変身させた。
「嘘…でしょ…?」
私は腰を抜かしてしまいそうになった……その時、
「あら、おはよう、愛莉ちゃん」
「オ母サン、オハヨウ」
「朝はちゃんと起きれた?」
「ウン、大丈夫」
…なんだろう、この敗北感。
そして、この朝の光景は。母と『もう1人の自分』が、普通に自然に会話をしている…。
その人、私の『ニセモノ』なのに…。しかも、ちゃん付け!?
「ん…? 『ニセモノ』…?」
朝のはずなのに、私の脳みそは動き始めた。
『ニセモノ』ならば、母は本物の私の姿を認識できるのか…?
いや、できないとしたら、どうする。
非常に困る。とても、困る。
母も認識ができないとしたら、友達も?
いやいや…。
「よし。もういっそのこと…」
私は、ドアの外へと飛び出した。
「どうにでもなれッ…!」
早足で階段をかけ降りる。すると、母と『もう1人の自分』と目が合った。
「あ…」
「あら、おはよう。愛莉」
「オハヨウ」
「もう…愛莉ちゃんと同じ洋服を着るなんて…まだまだお子様ねぇ」
「え…? 愛莉ちゃんと…?」
私がパニック状態になっていると、椅子に座っていた『もう1人の自分』…もとい『愛莉ちゃん』が、私に耳打ちをした。
「私、愛莉ノ妹、ダカラ。ヨロシク」
「は…はああああああああ!?」
私の壮絶な日曜日の朝は、これから始まるのだ。