「え…」
パチパチと瞬きを私は繰り返す。
何、が、起こってるの?
「ずっと前から杏奈が好きなんだ。
付き合って…欲しい」
まっすぐ見つめてくる誠の目は嘘とは言えなくて私は見つめ返すしかできなかった。
「え、まって。ちょっと整理できない」
いや、返事なんて決まってるでしょ?
私は光君が好きなのよ?ごめんなさい、の一言でしょ?
「わ、私は…」
どうして返事をする方が緊張してるの?
「私は…好きな人がいて、その…ごめんなさい」
ゆっくり頭を下げて謝る。
誠が。私を好き?
「杏奈」
名前を呼ばれて顔を上げる。でも視線はあげられない。
直接顔を見れない。
「どうしても、ダメ?考えて欲しい。好きなのって光だろ?」
ビクッと体が震えてスッと視線を誠に移す。
少し辛そうな顔。
「本当は、分かってた。光の事が好きなんだろうって。
それでもいいから告白しようと思ってたけど…無理、諦められない」
「そんな、事…」
そんな事言われても…。
「考えて欲しい。光に好きな人がいるって事も考えて」
あっ…そうだ。
ズキン、と胸をえぐられたような痛みに襲われた。
「か、考える…」
私って本当弱い。
自分に都合が悪いことが一つでもあったら逃げようとする。
それからお互い無言で帰った。
電車も無言。
唯一あのあと喋った言葉は最後のバイバイ位。
「どうしよう…」
ポツリと溢れた言葉。心の声がそのまま出ちゃった。

