「光っ!」
名前を呼ばれてハッとしたかと思うと目の前を何かがよぎった。
「あ、ごめん…」
愛巳がさっと俺の目の前で手を振っていたようだ。
「…ボーッとしてないで、みんなついてきてるでしょ?
いこ?」
「うん」
いつもの笑顔で笑う愛巳に向かって頷き食販をしているところへ行った。
「う〜ん!おいひー!!」
「杏奈大げさだなー」
3年生のどこかのクラスの出し物のたこ焼きを買ってみんなで食べてる最中。
幸せそうに頬張る杏奈の横で誠が笑っている。
「あ、ほら、マヨネーズついちゃってるよ」
「え?どこどこ?!」
あぁ…なんで見たくもない光景を見なきゃいけないんだろう。
「口の横」
誠が杏奈の口の左側を指して笑っている。恥ずかしそうに赤くなりながら口の端を拭く杏奈が少し目線を上げると、
パチっと目があった。
あっ、目があったー
今日で2回目くらい?目があったのは。
しかし、1秒もしないうちに杏奈から目線を外してまたうつむいてしまった。
「はは、そんなに恥ずかしがらなくても」
「えー?!恥ずかしいものは恥ずかしいよ」
拗ねて誠から顔を背ける杏奈を誠は愛おしそうに見つめる。
いや、ただ笑ってるだけかもしれない。
けど、誠の気持ちを知ってるから誠の笑顔が特別な意味を持って見えているんじゃないか…。
どうして、こんなに遠いんだろう?
楽しいはずの文化祭は、俺にとってただ息苦しさが増すばかりだし、
杏奈と誠がどれだけ仲良いかということを見せつけられてるだけ。
そうとしか思えなかった。

