「あ、もうこんな時間」
杏奈がケータイを見て驚いた顔をした。
杏奈の部屋の時計を見てみるともう10時を回っていた。
「本当だ。そろそろ帰るわ」
よっこいしょと立つと杏奈から
おじいさんか、と突っ込まれたので軽くデコピンしてやった。
「うわっ!いたーい!!」
おでこをさすりながら見送りにベランダに来てくれる。
「あ、杏奈髪の毛にゴミが…」
部屋の光でかろうじて見えたゴミをとってやろうと手を伸ばす。
「…あ、ありがと…ぅ…」
「ん、とれた」
ポイッとゴミを捨ててベランダに足をかける。
「よっっと」
俺は自分の部屋のベランダに飛び移りクルッと振り返る。
「またね」
「じゃあ」
手を振って自分の部屋に入る。
…と、その前に1度だけ振り返る。
あっ、
振り返った先には同じように自分の部屋に入ろうとしてこっちを振り返っている杏奈がいた。
杏奈がこっちに向かって手を振っている。
一瞬固まってしまったが直ぐに体を動かして俺も手を振る。
こんなに近くにいるのに
君の心の距離は計り知れないほど遠く手の届かない場所にあるんだろうな…。

