「…あー、光…ね」
突然声のトーンが下がったのは気のせいじゃない。
ついでに表情も冷たくなったのも気のせいじゃない。
忘れてた。自分のことばかりになってたけど…
背中を何か冷たいものがつたう。
「ま、今日は何もなかったよ?また頑張らなきゃね」
チラッとこっちに視線が来た気がしてならない。
私のこの恋は、
何かを得るために何かを失う。
そんな気がする。
「そっか〜…ま、これからまだイベントあるしがんばろーう!」
奏子は1人何も分かってないので私達の異様な空気には気づいてないようだ。
「…それじゃ、またね」
「またねー!」
私の家の前に来て、2人と分かれた。
愛巳は今日は奏子の家に行くようだ。
もしかして…今日のこと話すのかな?
そんな事を考えるたびに冷や汗が背中をつたう。
「…ただいまー」
重し足取りで家に入る。
いつもなら返ってくる声がしないのでお母さんが出かけているんだと思った。
ガチャっと二階の自分の部屋のドアを開ける。
……どうしよう。
私も好きになってしまった。
友達の好きな人を。

