「なんっー光!!待ってよ!ひかるっっーー!!」
外から愛巳の叫び声が聞こえて慌ててトイレから出る。
「おい!!愛巳どおした?!」
トイレから出ると愛巳が一点を見据えてはぁ、はぁ、と息を切らしている。
愛巳の視線をたどると
ただ廊下に人がごった返しているだけ。
「あ、光は?!」
「……った」
うつむく愛巳はボソボソと言葉を発する。
何を言ってるか正直聞き取れない。
「なに?もう一回いっ「光が杏奈を連れてっちゃったの!!!」
勢い良くこっちを見あげた愛巳の顔は酷く歪んでいて涙でぐしゃぐしゃだった。
「どうして…。どうして光は杏奈なの?っ!
ーっうわぁぁぁぁぁぁああああああ!!」
突然しゃがんで泣き叫ぶ愛巳にギョッとして一歩足を引いてしまった。
廊下にいた人達も何事かとこっちを見てくる。
とりあえず、移動しなきゃ。
俺は愛巳を無理やり立たせて肩をかしながら屋上に繋がる階段を登った。
もちろん屋上には行けないけどここの階段なら人は来ない。
「落ち着け、愛巳。何があったんだよ。
光と杏奈がどうした?」
そう言えば杏奈の姿もなかった…。
「光がっ、ひか、光が、杏奈をっ連れ去って、誠に、杏奈かりるって伝えてって」
…ああ、だいぶ読めてきた。
随分ムカつくことしてくれんな光のやつめ。
光が杏奈の事を好きなことはなんとなく知ってたけど、
光は自分を想ってくれてる人なんて気づかなさそうだからな。
こんな近くにいるのに。
だんだん落ち着いてきた愛巳はぽつりと呟いた。
「光は杏奈が好きだよね…」