「え、そしたら俺たちもいくよ」
もうそれしか思いつかない。2人きりにさせるなんて嫌だ。
俺はもうこの感情に気づいてしまった。
な?とまだここにいる予定だった愛巳を見下ろして聞く。
しかし、愛巳は不服そうに目を伏せて下顎をちょっと突き出す。
気に入らないことがある時のこいつの癖だ。
「えー、私まだ光の家にいたいよー。外だって寒いし…」
はぁ?!まだ9月中旬だぞ?!
「なんでだよ!カフェとかお前好きじゃん!」
引くわけにはいかないんだよ。焦ってんだよ。
俺よりも近い存在の人が杏奈ちゃんに出来ちゃったら…。
いや、今できてしまっているから…。
「杏奈と2人で行くからいいよ」
愛巳との口論がピタッとその声で止まる。
ゆっくりと誠(柴田)を見るとニッコリと笑っていた。
正しくは口元だけ。目はちっとも笑ってない。
その目は、俺に挑戦状でも突き出してるみたいだ。
「あ、須藤もいく?」
誠は直ぐに目をそらして誠(須藤)を覗き見た。
「だから、今日はここで解散!またな」
誠(柴田)の声になにも言い返すこともできない。
仕方なく受け入れる。
「あ、ああ。またな…」
俺はやるせない気持ちで杏奈ちゃんを見ると丁度杏奈ちゃんもこっちを見ていた。
バチっとぶつかる視線。杏奈ちゃんは気のせいかもしれないけど、俺を見て怯えた目をしていた。
ぱっとすぐに目を離され俺も視線を杏奈ちゃんからそらした。
「それじゃ、お邪魔しましたー」
みんなが家を出ていくため見送りに玄関まで来た。
見送りなんてしたくないんだけど…。
俺は杏奈ちゃんと誠(柴田)が隣同士で歩く姿を見送り、ドアを閉めようとした…が、
ガシッ!といきなりドアが掴まれまた開かれた。
「え、えっ?!」
「お前〜〜」
現れたのは杏奈ちゃん達と反対方向に向かう誠だった。
「お前なにしてんの?!帰れよ!」
なぜかこっちを睨む誠を外に押し返してドアをまた閉めようとする。
「は?!まて!話しがあんだよ!」
「話し?それならそうと早く言えよ!」
俺はもう一回ドアを開けて誠を中にいれようとしたが、逆に誠に外に連れ出されてしまった。
「おま、なんなんだよ!」
手首を掴まれた誠の手を振り払い俺は止まる。
「あのな、お前分かってる?柴田の誠が杏奈ちゃんの事好きって」
ギクッとして体がピクっと動いてしまった。
それをみたのか誠が呆れた目でこっちを見てきた。
「わかってんのね?まぁ、あいつ見てりゃ絶対分かると思ったけど。で、お前はどうなの?って思って。まぁ、あんな必死な姿みりゃ分かったも同然だけどな」
ニヤリと余裕そうな顔でこっちを見る誠に赤面する。
「まだ好きなんていってねーだろ!」
「あ、やっぱ好きなんだ」
しまった。墓穴ほった。
「俺だって、今日気づいたんだよ…」
はぁ〜とため息をついて地面にしゃがみこむ。
好きになっても、もうライバルがいてしかも結構先を行っていて。
望みがなさすぎて泣きそうだ。
「ま、とりあえずそれだけ確認したかったからまた明日な」
「は?おい!」
本当にそれだけなようで、誠は直ぐに走って帰ってしまった。
俺はとりあえず家に入って2階に上がる。
「遅かったね?」
あ、忘れてた。
穏やかそうな笑みでこっちを見る愛巳。
そうだ。まだ帰ってなかったんだ。
「愛巳、悪いけど帰ってもらっていい?具合悪いんだよね」
今日1日で精神面が大分疲れてしまった。
「え?!大丈夫?熱あるんじゃないの?」
「大丈夫だよ。ごめんな、せっかく残ってくれたのに…」
申し訳ないけど、やっぱり今は1人になりたい。
愛巳は心配そうな、戸惑ったような顔で「わかった」といって帰って行った。
「はぁ」
布団にダイブして頭を整理する。
どうして好きになった?
どうして好きと思った?
理由も、きっかけも、分からなさすぎる。
それでも、この想いは絶対に他に言い換えることが出来ない。
ぎゅっと苦しくなる、幸せになれる。
恋なんだ…。

