誠を見上げる目は少し見開かれている。
あ…
何故か誠を目で追ってしまい、たどり着いた先を見て目を伏せてしまう。
よいしょ、と言いながら杏奈ちゃんの隣に腰を下ろす誠。
「みんな早いんだね」
目を伏せても動きが分かってしまう。人間の視界の広さが割と広い事を今恨む。
その言葉は隣に座る杏奈ちゃんへ向けられてるものだと嫌でも分かってしまう。
……嫌、でも?
どうして嫌でもなんだ?べつに話すくらいどうでも……。
心の中でそう言っててもどこか引っかかる、この『嫌』という気持ち。
「でもついさっき来たばっかりだよ」
コップを杏奈ちゃんの方に置こうとするのを利用してちらっと目を上げて2人を見てみる。
ニコニコとしながら誠に向けて言うその言葉に、なんでもないその会話にズキンと胸の奥が痛くなった。
なんだなんだこれは…。
痛い。消えないんだけど…。
「そーなんだ!あ、光これお菓子ね」
目の前にヒョイっと突き出されたクッキー。
つい痛みに気をとらわれて直ぐに受け取れなかった。
「ああ、うん。ありがとう」
やっと言葉を発して俺はクッキーの用意のため下に降りる。
なんで、なんでこんなに痛いんだ?
病気か?ただの一時的なもの?
初めての感覚にもの凄い不安感を覚える。
というか不安しかない!!
「なんなんだよぉ〜」
ため息混じりに心の声をそのまま声に出す。
消えない痛みに杏奈ちゃんと誠にもモヤモヤとした感情が湧き出てくる。
俺って、実は結構おかしいのかな…?
割と頭は丈夫な方なんだけど…。
考えても答えは出ないまま。しょうがないのでクッキーをもって二階に上がる。

