「た、ただいま、お母さん!」


母を見上げ、笑顔で言う。
笑顔、とは言ったものの実際うまく笑えているのかはわからない。
引っ叩かれた頬がジンジンと熱を持ち、痛みは強くなる。
涙が出そうになるが必死で堪えた。


「部屋の掃除、しなさいね」


私にその一言を告げ、母はソファに座り、テレビをつけた。
リビングにはゴミが散乱していて、放っておけば異臭を放ち始めるだろう。
母は家事をせず、ほとんどの家事は私が担っていた。
それは私が幼い頃から。
毎日掃除をしているが、部屋が汚れない日はない。
飲み物は床にこぼれ、乾いて硬くなっており、生物までもが床に散らかしてある。