「俺が菜々美を嫌うことはないよ」


わかっていた回答。
彼は私なしでは生きられない。
私に不幸な事故が起き、私が死ねば彼もすぐに後を追ってくるのだろう。
そう確信を持てるのは、彼が私しか見ないから。

彼の指が私の長い髪を梳く。
乾いた、と呟く声が聞こえた。
彼に向き直り、強く抱きしめる。

あ、やっぱり消えない。

微かに血の臭いがする。
いつだって、彼からは血の臭いがした。