彼に傷ついた右手を見られる。
彼は傷だらけの理沙と私の手を交互に見て何かを察したようだった。
「なんとなくわかった」
彼の冷めた声だけが室内に響いた。
クラスメイト達は何も言えずにその場に立ち尽くしている。
それは教員達も同様、何も言えずにいた。
いじめを見て見ぬふりをしていたこと、今になって悔やんでいるのだろう。
何事も問題が起きてからでは遅いのだ。
「この女、俺に何度もしつこく告白してきた女だよ。やっぱり早々に片付けておくべきだった。こんな汚いこと、菜々美にさせてごめんね」
彼に抱きしめられる。
彼の腕の中で、私は「ごめんなさい」の言葉を繰り返していた。


