そんなことは望んでいない。
ましてや彼に『殺して』などと頼んだ覚えもない。
そう思いはするも、口には出さない。
臭いに対する吐き気を抑え、私は笑顔を作った。


「ありがとう、夏目」


彼の名前を呼んだ。
嬉しそうに笑う彼。
彼が笑うから、私も笑う。
笑って、


「他人から向けられる好意ほど、気持ち悪いものってないもんね」


泣きそうな気持ちを堪えて。
――――ごめんね。
もう息をしていないその体に心の中で謝罪を告げた。