「嬉しい」


にっこりと短く感情を表した彼。
愛しいと、そう思えた。
彼の頬に手を伸ばす。
その頬に触れるととても冷たい。
初めて彼に触れた日もとても冷たかった。
私が、彼を温めてあげよう。
私は彼の居場所なのだから。


「あの日、逃げてごめんね」


彼を怖いと思ってしまった日。
母のこともあり、咄嗟に逃げてしまったことを謝罪する。


「もう二度と離れないでね」


返ってきたその言葉には重みがあるような気がした。
小さく頷くと頭を撫でられて、彼は優しく微笑んだ。
この笑顔を壊したくない。
だから私は彼と一緒に生きる道を選んだ。