自販機の有る方に向かう。





充夏が雪の顎に手をかけていた。

雪は遠目からでも判るほどに怯えているようだった。





頭の中から、言葉が吹き飛ぶ。





駆け出す。





雪を充夏から引き離す。

抱き寄せた肩は震えていた。





充夏を睨む。





「行こ、花月さん」


雪は抵抗しなかった。





その日も、柾と英兎は居なかった。


「アイツら、帰るの早いよねぇ」


精一杯、明るい口調。


雪はうつむいたまま、応えなかった。


…無神経だったかな。





空を見上げる。





月は、やけに遠くに見えた。