階段を昇る。


屋上まで、無人。





屋上に出る。


空を見上げる。

月が近づいた気はしなかった。





人の気配。


小柄な少女がこちらを向いていた。





か細いシルエットからかもし出される、儚げで、どこか神秘的な雰囲気─





口元にあてがわれた、透き通るように白く、しなやかな指─





小さい、白い花をかたどったヘアピンがささった、ふわふわとした、短めの黒髪─





見えたのは、それだけだった。