みすみの花が開くとき

帰り道。





二人は並んで歩いていた。

話しているのは他愛の無い事。

誠にとっても、雪にとっても、その穏やかな時間は心地良かった。





そんな二人の後を追う影が一つ。





影は歯ぎしりをした。





本当なら、あそこには、自分が居るはずなのに…。

そこには自分ではない人間が居る…。

あの声は、自分が聞けない所で響く…。





あの笑顔を、一番近くで見られるのは、自分だったはずなのに…。

今、あそこには、自分は居ない…。





影は歯ぎしりをした。