みすみの花が開くとき

《Lievre》。


客足は疎らだった。





「お帰り。お月見は出来なかったかな?」


雪は奥を覗いた。


「はい…。…あの、玉兎さん、あの、ケーキ、出していただけます?」

「どこで食べる気だい?」


雪は押し黙った。


「行くアテが無いなら、ウチの二階を使っていいよ」


ここ、上の階が有ったのか。気にもしてなかった。





「じゃ、誠。…お邪魔させてもらお?」


雪は紙袋を下げて居た。


「ごめん、先、行ってて」

「え…?」

「すぐに済むから」

「…うん」


雪は奥の階段を上がって行った。