みすみの花が開くとき

弁当も食べ終えて、一段落。

幸い、弁当は傷んではいなかった。





公園に点々としている大道芸人を見て回る。

途中、大道芸人の語りに茶化されながら、日は暮れていった。





雨。





口の中で舌打ち。


どうせなら、雪降らないかなぁ。

梅雨だけどさ。


「雪。戻る?」


傘持ってないし、走らなきゃなぁ。

少しでも、ゆっくり歩きたいんだけど。


「…誠。雨は嫌い?」

「なんで?」

「…今、嫌そうな顔してるよ」

「そう?」

「誠って…、判り易いコだよね」


そうらしいなぁ。


「雨だとさ、走らなきゃだめじゃん。…せっかく雪と歩いてるのに」


雪はくすくすと笑っていた。


「…かわいいなぁ」

「本心だし」

「そんな事言って…。傘持ってないだけでしょ?」

「それもあるけど」


雪の方が好きなんだよなぁ。


「あたし、傘持ってるから、…ね?」


雪は少し恥ずかしそうに折り畳み傘を取り出した。


相合傘じゃん。


傘を受け取る。

無地の、薄い水色だった。





二人は濡れずに、《Lievre》まで、ゆっくりと歩いた。