みすみの花が開くとき

雪は紙袋を下げて戻った。


「…お待たせっ」

「何、その袋?」


雪は白い歯を見せて笑った。


「えへ。…前に言ってたでしょ。

あたしの手作りケーキだよっ」

「え、本当?」

「あたしは英兎くんほどいじわるじゃないよ…」


英兎は、…いじわるだったな。


「でも…、月見だよね?まだ昼にもなってないけど」

「…あ。そういえば…。お昼じゃ、ムード出ないよね」


あ、素なの?

…つーか、ムード?響きがエロい気が。


「じゃあ、夜までデートしない?」

「うん!…あ、ケーキ、どうしよう…」

「玉兎さんに預けておこう。行こ?」


雪の手を引く。





その時、雪の手に震えが無かった事が、この上無く、嬉しかった。