「じゃあ俺はもう一回泳いでくるね!」

「がんばってください!」

「応援してます!」


噂の沢城奏多先輩は、本当にイケメンだった。プールの塩素で色素が抜けた髪。まん丸のビー玉みたいな綺麗な瞳。すらっと伸びた鼻。まるで漫画の世界からそのまま出てきたような、そんな感じ。

女の子の扱いも丁寧で、どんなことをすれば好かれるのかも分かっているようだった。


「なんだろ。チャラい感じがするのに、憎めないというか…」

「様になってるよね。」


そんな彼は一体どんな泳ぎをするのだろうか…




よーい…


ピッ


ばしゃん




「「「きゃーーーー!かっこいい!」」」


彼が泳いだのはクロール。ひとつひとつの動きがスローモーションに見えるくらいの丁寧なストローク。バシャバシャと音を立てるキック。彼の動きは息継ぎのひとつさえ様になっている。



「いやぁ凄い歓声だね…


って、みーちゃん?どうしたの?」



なんだろう、この感覚。
胸がざわざわする。



「………きれい」



私は彼を見て、ただその一言しか言えなかった。