とりあえず一通りグラウンドの部活を見学することになった。
サッカー部、野球部、ハンドボール部、ラグビー部…
「うーん。どこもピンとこないなぁ」
陸上部以外のところはマネージャーも募集しているらしく、快く招いてくれた。
『君かわいいね!良かったらマネージャーやろうよ!』
とサッカー部。少しチャラい。
『よ、良かったら是非野球部に!お願いしゃす!』
と野球部。礼儀正しいけど、マネージャー希望の子が多かったから、そんなに人数入れるかな…
『ねえ!ちょっとでいいから見学しない?一瞬!一瞬でいいから!』
とハンドボール部。ぐいぐい腕を引っ張るのはやめて欲しかった…
『可愛い子たち!俺たちのタックル見ていかない?』
とラグビー部。急に肩を組むのは良くないと思います。
「本当どうしようかな〜」
「みーちゃんがこれだ!って思ったやつがいいよね!」
「そうだよねー。
じゃあ、次体育館行ってもいい?」
「おっけー!」
私たちは体育館に向かうことにした。…のだが。
ちょっとまって。なんかデジャヴを感じる。
体育館に行く途中で人だかりを見つけた。しかも女子ばかり。
入学の受付の時も確か…こんなようなことがあった気が。
「すごい人だね。どこの部活なんだろ?」
「うーん、ちょっと気になるし行ってみる?」
近づいていくと徐々に状況が分かってきた。
ここはプールだ。ということはここは
「水泳部、だね。」
「みたいだねー。水泳部、そんなに人気なの?」
水泳部がそんなに人気のある部活だとは思っていなかったのだが…むしろ、人数が少ないイメージだ。
「なんか人気の理由でもあるのかな?」
「もしかして、水泳部も強豪だったり…」
「「「きゃーーーーーー!!」」」
私たちが女子の人だかりの後ろで話していると、前にいた女子たちが突然悲鳴をあげた。
「え、なに、どうしたの?」
「私にはなにもわかんないです。」
2人であたふたしていると
「みんな、見学に来てくれてありがとう。ゆっくりしていってね」
「「「きゃーー!かっこいい!」」」
どこのアイドルですか。
耳が痛くなりそうなほど高い声。よくこんな声出せますね。私は同じ女として尊敬します。
…じゃなくて!
今の誰?心地よい低音ボイスで、声だけでイケメンであることは理解した。
「今の人、誰なんだろう?」
「…なんか、私聞いたことあるかも。
この学校の先輩に聞いたんだけどね…」
鈴が言うには、どうもこの学校には王子と呼ばれている人がいるらしい。
名前は沢城奏多。容姿端麗で、女の子にはとことん優しくしてくれるらしい。
そのためファンクラブもあるらしい。
「王子…」
「その人が多分、今の人なんじゃないかな?」
こんな人気者はアニメや漫画だけの話ではないのか。現実にあり得るのか。
「せっかく来てくれたんだけど…ちょっと入り口にいると、他の人たちにも邪魔になっちゃうし…うーん、どうしようか?」
人が多すぎてまだ顔は見れないのだが、きっと沢城奏多先輩は困った顔をしているのだろう。
周りの女子から、困った顔も可愛い。とか、かっこいい。とか聞こえてくる。
「蒼くん!プールサイドにあげてもいいかな?」
「…好きにしろ。ただ、部活の邪魔はするな。靴は脱げ。」
「はーい。というわけだから、靴は脱いでもらうけど、いいかな?」
「「「はーい!」」」
ざわざわとプールサイドへ入っていく女子たち。
やっとこれで私たちも噂の先輩を見ることができる。
「どんな人なんだろ?」
「とりあえず、イケメンなのには変わりないよね、きっと。」