「いーち、にー、さーん、しー」
「おい!佐藤!もっと前行け!前!」
「もっと声だしてー!」
グラウンドへ行ってみると、そこにはいろんな声が溢れていた。
陸上部、サッカー部、野球部、ハンドボール部…
「うわぁ…!色んな部活があるね!」
「そう?
私は中学の時とそんなに変わらないかなぁ…」
「え、そーなの?
私の中学って田舎だったし、部活も少なかったんだよねー。だから楽しみ!」
しかも私はバレー部だったので、ずっと体育館にいてグラウンドの部活についてはあまり知らない。
だから目に映る全てのものがきらきら輝いて見えた。
「あ、もしかして見学の子?」
「あ、はい!そうです!」
陸上部の近くまで歩いて行くと、マネージャーらしき女子に声をかけられた。
一つか二つしか歳が離れていないはずなのに、その人はとても大人に見えて、私たちは思わず硬くなった。
そんな様子を見て、彼女はくすりとこれまた上品に笑った。
「そんなに緊張しないで。気楽に見学してね」
「「はい!ありがとうございます!」」
「ふふ。いい返事。
じゃあこっち来てくれる?」
私たちを案内してくれるようだ。
まさに部活の真っ最中の隣を歩く。
「いーち、にー、さーん、しー、」
「最後まで全力!サボるな!」
ここの陸上部は強豪なのだろうか。どの人を見ても引き締まった足の筋肉。それに、練習中の気迫が他の部活とは少し違う気がした。
「うちはね、強豪って言われてて、だから選手もみんな強い人ばかりなの。
でも、最初からみんな強いってわけじゃなかった。もちろん初心者の子もいた。
でも、みんなに混ざって練習に食いついていけば、自然とみんな強くなっていくの。」
「先生の指導がいい、とかですか?」
「ううん。そうじゃないの。
単に、走るのが好きっていう理由だけで、みんな頑張ってる。
それぞれの目標を達するために、チームとして、全員で励ましあっているんだ」
「チームで…」
「そ。だから陸上部ってみんな仲がいいんだよ?」
自分たちのことをとても誇らしそうに話している先輩は、とても素敵だった。
それと同時に、私もそのチームに入ることができたら…なんて。そんなことを考えた。
