私は如月美桜。
今年の春からついに高校生となる身である。

とことこ昇降口へ向かう途中、ある人だかりを見つけた。

きっとあそこが受付なのだと思う。


「新入生のみなさーん!受付はこちらですよー!」

「ここでクラスを確認してくださいねー!」


どうやら受付を行っているのは在校生のようだ。
大きな声を出して新入生を誘導している人たちの腕には、"生徒会"の腕章が。

中学では存在しなかったそれが、私の胸を高鳴らせた。




受付が行われているであろうテントに行くと、そこには驚く光景があった。



「…新入生の人は空いている所からクラスを確認してくださーい。」

「…こっち空いてますよー…」



受付テントには混雑しないように、受付の人が5、6人並んで待っているのだが…

1人の場所にズラッと行列が出来ているのだ。


「…何これ?ここに並ばないといけないの?」

え。しかも並んでるの女子ばっかだし…
男女で並ぶところ違うとか…?


面倒くさい…


近くにいた"生徒会"の人に聞いてみることにした。


「あの…これって、女子はここに並ばないといけないんですか…?」

「え?いや!全然!そんなことないよ!

むしろね、あっちとかに行って貰った方が嬉しい!うん!」

その人曰く、女子がここに並びすぎて困っているんだとか。

まぁ、何故女子が固まって並んでるのかはいまいち分からなかったが。








「受付お願いします。」


「…え?あ、はいはーい」

一番端の人の所へ行くと男の人が少し慌てたように、でも親切に対応してくれた。

「んーと、ちょっと待ってくださいねー」

「…あのちょっと聞いていいですか?」


「んー?なにー?」

「なんであそこの列だけあんなに並んでるんですか?」

少し気になっていたし、受付の男の人も時間がかかりそうだったので、聞いてみた。

「あー、あれね。」

するとその人は少し手を止めて、ちらりとあの行列を見た。

そして少し眉を顰めて困ったように笑った。

「まー、なんて言うか…あー説明難しいなー。
まぁ、見ればすぐに分かるんだけどね。」

「見れば…?」

「そ。ま、俺的には久々に仕事来たし、美桜ちゃんがこっちに来てくれて嬉しかったな。」

にこりと。まるでアイドルかよと言いたくなるような笑顔だった。
それに、なんで私の名前も知っているのか…知り合い、ではないし。そもそもこんなイケメンが知り合いなら、忘れているはずがない。


それより、よく見るとこの人…顔整ってるなぁ…

こういう人と出会って、恋に落ちて…
なんて高校生活が上手く行くのは、漫画の世界だけだけどね。

「はい。お待たせしました。
如月美桜ちゃんは1年5組ですね」

改まった表情と台詞で私の名前もクラスを言うと、彼はあのアイドルの笑顔で笑った。
彼の手には私のフルネームとクラスが書かれた紙があった。なるほど。これを見たから私の名前を知ってたのか。そりゃあ、私はこの人を知らないわけだ。

「ありがとうございます。」

「これからの学校生活、楽しんで!」

「はい」




いよいよ私の高校生活が始まる。