―数年後。


「おはよう、裄」

「おはよう、浅海」


あたしたちは、今日も笑顔で暮らしてる。


久しぶりにゆっくりできる休日。

朝食をテーブルに並べて、椅子に座った。


「そういえばこの前、お隣さんに“笠原さんの奥さん”って言われちゃった」

「何? 嬉しかった?」

「うん。恥ずかしかったけどね」

「本当のことなのに」

「だって“笠原”って、まだ慣れないんだもん」

「慣れないって…もう結婚して半年だぞ?」


そう。

半年前、あたしは裄と結婚した。

ずっと二人で暮らしてて、裄にプロポーズされて。


嬉しくて、思わず泣いちゃったな。


「病院でもね、“笠原さーん”って呼ばれるんだけどね、
一瞬あたしじゃないと思っちゃうんだよね」

「おいおい。
今はもう“笠原浅海”なんだから、慣れてくれないと困るんだけど」


そう言って、裄は笑った。

あたしが通ってるのは、産婦人科。

3ヶ月前から、裄との赤ちゃんがお腹にいる。


すごく、幸せな毎日。