その時。 人混みから抜けて、こっちにやってくる人がいた。 「梨元っ」 「裄くん?」 それは裄くんだった。 でもなんで? なんでわざわざ人混みを抜けてあたしのところに来るんだろう? 「ああー…もうだめ。俺人混み苦手なんだわ」 「そうなの? 大丈夫?」 あたしの隣に立ち、壁に体を預ける裄くん。 左側だけ、熱くなる。 「あー、梨元、数Ⅱの宿題やった?」 「やったよー」 「まじで? すげーな」 実は裄くんと同じクラスのあたし。