「裄ぃー。一緒に帰ろー」 相変わらず猫なで声で これも相変わらず裄にしがみついて 恩田さんは言った。 だめだって! 裄はあたしと帰るんだから! 「俺、浅海と帰るから」 しれっと言う裄。 思わず笑みがこぼれた。 なんだか嬉しくて。 けれど。 「えー、帰ろうよー」 「はいはい、また今度ね」 ‘また今度’? 恩田さんと二人で帰るの? なんで? あたしは? 裄と二人で帰るのは、あたしじゃないの? 意味分かんない。 裄が、分かんない。