「ねえ、裄ぃー!」 ほら、また。 裄にしか出さないような猫なで声で 意味もなく裄の腕に絡まる。 その腕に絡まっていいのは、あたしだけだッ! 裄も振り払うけれど、まんざらでもない様子で、へらへらと笑ってる。 なんか‥ムカついてきた。 裄の彼女はあたしだよねえ? なのに、なんで恩田さんが腕に絡まりついてるの? なんでそれを、優しく引きはがすの? ねえ、なんで? あたしの中で渦巻く嫉妬心は、 消えることなく大きくなるばかり。 裄の態度が、更にそれを掻き立てた。