裄の腕に包まれたあたしは 裄の鼓動に耳を傾けた。 トクトクと、心地よいリズムを刻んでいる。 けれど、どことなく早く感じる。 『ドキドキしてるんだ』なんて そんなこと思っている場合じゃないのに のんきに思ってたり。 いつの間にか安心して 裄の速い鼓動にクスクスと笑っていると 裄の腕の力が少し弱まった。 「‥何で笑ってんの?」 少し拗ねた裄が、怒ったような表情であたしを見ながら言った。 「だって、裄、ドキドキしてる」