その時。


「俺と浅海先帰るから、部活見学二人で行ってくんない?」

「んー、分かった」


びっくりして顔をあげたあたしを、引っ張るようにして裄は歩き出した。


「ゆっ、裄?」


あたしが声をかけると裄は、振り返ってあたしの頭を撫でた。


「とりあえず、俺んち行こ? 話聞くから」


優しい裄の笑顔に、あたしは小さく頷いた。


そのまま裄の家へと向かう。

この大学は裄の地元にあるから、

裄の家までは歩いて10分ほど。

その間ずっと、手を握ってくれていた。